你是年少的歡喜

中国の大学に通うはたち。広告学専攻。

国家の偶像化

 

中国といえば、国民の愛国心が強い国。街中にはそこら中にプロパガンダの標語・スローガンが飾られている。(「社会主義価値観」など )

逆に言ってしまえば、中国では国に逆らう国民は生きていけない。全員が全員、国家を愛し、崇拝していなければならない。(少し誇張したが。まああまりにもあからさまに批判してはいけない、少なくとも見えるところでは。)

 

そして近年、その愛国崇拝の感覚が現代風に形を変え、国家を偶像視する動きが見られてきました。

偶像といえば、アイドル。そのままの意味で歌って踊る人たちに対して、「偶像」という言葉を中国では用います。

 

中国のアイドルファン文化といえば、微博(SNS)での活動がほぼ全てを占めていますが、数多くのファンが自分の愛するアイドルのために様々な効能を持つファンページ/もしくはコミニュティを微博内で作り上げています。

たとえば、反黑站と呼ばれるもの。站というのはページ/サイトの意味を持ち、反黑とは、「黒に反する」つまりアンチに反抗する、アンチ撲滅を目的とするファンページのことです。自分の好きなアイドルの名前+反黑站で微博内で検索をかけると、ほぼ確実にそういうアカウントの存在を発見できると思います。

反黑站の主な活動は、ネット上でそのアイドルに対しアンチ行為をしている者を探し出し、ファン全員で該当アカウントを運営側に報告、ブロックするよう促すことが主です。

 

他には、超话。こちらは様々な物事に関して興味を持つ者同士が集まり、それについて語り合ったりできる微博内のコミニュティのことです。アイドルだけでなく、趣味(料理、撮影など)、学問(美術、数学など)、ペット(犬、猫、小動物など)多岐にわたるジャンルの超话が存在します。その超话の設立を求めるユーザーが一定数越えれば、どんなものの超话でも簡単に立ち上がることができます。

 

このように微博上ではアイドルファンたちが活発に参与できる様々な環境が存在するわけです。ほぼすべてのアイドルファンが自分の好きなアイドルの超话に加入し、反黑站に貼り出されたアンチ行為を行う者に対し報告やブロックをしたりする。

 

本題に戻りまして、最近、中国では中国という国家自体を偶像(=アイドル)化する動きが出てきた。と言いましたが、これは中国という国を擬人化し、「阿中哥哥」などという愛称をつけて国家自体をアイドルと見立てる、という動きが見られてきた、ということです。一般市民を始め、国家の重要機関、大手メディアなども積極的に阿中哥哥という愛称を使用している。(ちな阿中哥哥を日本語で表したら、「中国兄さん」くらいの感じ。「阿」は名前の一文字につけて親しみを表す愛称の一種、「哥哥」はお兄さんという意味です。韓国でもアイドルに対して오빠と呼びますよね。あれと同じ感じで、中国もアイドルに対し〇〇哥哥とつけて呼ぶことがあります。)

そんな感じで、国をまるでアイドルのように見立てる動きが現れ、国慶節(=10/1 中華人民共和国誕生を祝う国の需要な記念日)のときにも、一般市民や大手メディアなども含め、中国中で「我爱你(愛してるよ)、阿中 」などという言葉を使っているのが見られました。今だったら武漢のコロナのあれで、「阿中 加油(頑張れ)」というような言葉がネット中にありふれている。

まあここまでは特に何とも思わなかった。けれど、今では、この擬人化された国家のために反黑站やら超话までできてるのだといいます。

 

どういうことか。

「阿中哥哥反黑站(=中国アンチ撲滅隊) 」

実際に微博に存在するこのアカウントを見てみると、世界各国の中国に対する侮辱などを紹介し、それに対して反発する言葉を書き、中国を尊重するよう促すような投稿をたくさんしていました。比較的新しい投稿でいうと、ヒロアカの志賀丸太というキャラに対する反発。これは丸太という名称が、過去の日本の731部隊という組織が中国人や韓国人に対し残虐な人体実験などを行なっていたときの被験者の隠語(マルタ)を連想させる、という理由で中国人や韓国人から大批判が起きているという事件。この阿中哥哥反黑站でもこのことを取り上げ、「普通に金を稼げるのじゃ満足しないのか、どうしても中国を侮辱する要素を入れたいのか」といった文を添え怒りを見せていました。

またこの阿中哥哥反黑站の投稿を見ていくと、「祖国反黑站」という名の超话を見つけました。先ほども言った通り、超话は特定の物事に対し興味を持つ者が一定数集まると立ち上げられるコミニュティのことですが、このように祖国アンチを撲滅する目的で作られたコミニュティが存在していることを初めて知りました。

中に入り投稿を見ていくと、様々な国でされた中国侮辱発言、事件などをたくさんの人が投稿し、怒りを露わにした文章を添え、反発の意を見せていました。

これってどうなんかなあ、と思いながら見ていたんですが、確かに自分の国家を侮辱されたら、大抵の人は怒るしいい気はしないでしょう。こんなのもあるんだなあと思いながら色々な投稿を見ているうちに、一方でこういう意見も見かけました。

あるユーザーの投稿の訳。

 

「なぜ、一つの国家を擬人化してはならないのか。例えば “阿中哥哥”のように 。 なぜならそれ(国家)とは公衆から監督され、批判と疑いの声の中で成長し、前進していかなければならないものだからだ。国家が自らを正式的に偶像として美化させてしまい、反黑站、超话、控评などの行為まで誕生させてしまったということは、例えれば  “誰も私の好きなアイドルの悪口を言ってはいけない、批判的な意見も受け入れないし、疑いの声なども聞きたくない。もし誰か私のアイドルを批判すれば、悪口をいえば、その人はもうアンチだ。アンチなんて、撲滅すれば終わり。撲滅したらファンの間では賞賛の声で溢れる。” これと同じことだろう。

あなたはこのような社会は成長できると思うだろうか?国家が頼りにしていかなければならないのは人民であり、ファンコミニュティではない。これは国家が市民に親しんでいるのではなく、ただの間抜けな行為だ。」

 

たしかにと思いました。こういう意見を持った方もいるんだなあと思いました。

 

 

中国は愛国心が強い(もしくは形式上そのように見せなければいけない)国なわけですが、そもそも国家をひとりのアイドルとして見立てる、これがまず異常で、日本では考えがたい感覚ですよね。元々は若者の流行り(=アイドルファン文化)を取り入れて、国をもっとみんなで愛していこう、国を批判する者たちから守ろう、という意図だったんでしょうか。

 

まあそんな中国のあるネット上の特殊なムーブメントについての紹介でした。

 

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2021.7.8 追加

 

一年以上の前の記事に追加ってどうなのって。

この時の記事読み返してて自分の中での理解も変わった部分があったのでいろいろ書き変えました。

ちなみに国家のアイドル化をテーマに国慶節を祝う動画を中国の養成系アイドル易安音乐社(and易安中学)がコンテンツとして載せていたのでぜひ参考資料として見てみてくださいな。内容としては「阿中哥哥」(=中国をアイドル化した像)の誕生日イベント現場前のファンのイメージを再現した感じ。易安の子たちがファンを演じ、「阿中哥哥お誕生日おめでとうございます!永遠にファンです!」などの祝福言葉をみんなで言ってく。会場前の出待ちとか、わざわざスローガン作って持ってるとことか、想像力がすごい。かなり面白い内容です。コメントでも称賛の意見が多い。真剣にこれをやってるんだなあという驚き。中国ってすげえ

如果以饭圈的方式打开祝福祖国生日视频【阿中哥生日快乐】_哔哩哔哩_bilibili